京都新聞
 紙面特集

秋季特別展 日本の素朴―ゆるい、かわいい、たのしい美術

龍谷大 龍谷ミュージアム
かみ代物語絵巻 室町時代(16世紀) 西尾市岩瀬文庫
大坂城堀の奇獣 江戸時代(19世紀)
湯本豪一記念日本妖怪博物館
(三次もののけミュージアム)

この思い、純真。

つきしま絵巻 室町時代(16世紀) 日本民藝館

 おおらかなタッチの具象画や彫刻。日本では昔から、一流の画工や仏師の名品と並んで、素朴な表現の作品も大切に伝えられてきた。現代の目で見ると何とも愛らしいこれらの美を古代から大正時代まで集め、その魅力に迫る。

 一口に「素朴絵」と言っても成り立ちは多様だ。室町時代の「つきしま絵巻」はのどかな絵柄だが、平清盛の港湾造営と、人柱として沈められる人々のドラマを描く。仮にこの絵師にヨーロッパのバロック絵画のような表現ができたら、いかに劇的な作品が―と思うが、この画力だからこそひたむきな思いが強く伝わるとも思える。

 他方、大正時代の「雲水托鉢(たくはつ)図」などは「これが受ける」と意識して作られた作品だ。見た目は素朴でかわいいが、デザインとして完成されている。

 江戸時代の「大坂城堀の奇獣」は、この生き物の出現を伝える、いわば報道目的の作品だから、描いた人もまさか自分の絵が後世、展覧会で「素朴絵」として紹介されるとは、という感じだろう。

 多様な背景を持つものを現代の価値観でひとくくりに「かわいい」と言っていいのか。企画者の1人、龍谷ミュージアムの村松加奈子学芸員は「そこから議論が深まれば」と話す。なぜ描かれたのか。なぜ残ったのか。こうしか描けなかったのか、わざとこう描いたのか。素朴さを愛する日本人の本質にまで思い及ぶこともできる。素朴に見えて深い展覧会だ。

雲水托鉢図 南天棒筆 大正時代
伏見人形図(部分)伊藤若冲筆 江戸時代(18世紀)
埴輪(力士) 古墳時代
高槻市立今城塚古代歴史館
案内
■会     期9月21日(土)~11月17日(日) 月曜(9月23日、10月14日、11月4日除く)と9月24日、10月15日、11月5日は休館
■会     場龍谷大 龍谷ミュージアム(京都市下京区堀川通正面下ル、西本願寺前)
■開 館 時 間午前10時~午後5時(10月の土曜は午後8時まで。入館は閉館30分前まで)
■入  館  料一般1200円(1000円)、高大生800円(600円)、小中生400円(300円)。
かっこ内は前売り、20人以上の団体料金
■主     催龍谷大 龍谷ミュージアム、毎日新聞社、京都新聞、NHK京都放送局、NHKプラネット近畿
■特 別 協 力浄土真宗本願寺派、本山 本願寺
■監     修矢島新(跡見学園女子大教授)
■関連イベント<記念講演会>
9月29日午後1時半~3時、龍谷大大宮学舎東黌101教室(下京区七条通大宮東入ル)。「日本の素朴絵―ゆるカワ日本美術史」(矢島新・跡見学園女子大教授)。先着200人。申し込みが必要。
<スペシャルトーク>
10月5日、11月2日午後1時半~2時15分。龍谷ミュージアム1階101講義室。学芸員が見どころを解説。申し込み不要。
※いずれも聴講無料。特別展の観覧券が必要(観覧後の半券可)。
<リピーター割引>
9月21日から10月31日の間に来館した人が対象。詳細は展覧会ホームページを参照。
■問 い 合 わ せ龍谷大 龍谷ミュージアム075(351)2500

【2019年9月17日付京都新聞朝刊掲載】